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【翻訳】災いが帰ってくる:アパラチアの黒色肺

2016年04月17日
csij 【203. 市民研通信】

災いが帰ってくる:アパラチアの黒色肺

Carrie Arnold

翻訳:五島綾子、五島廉輔、上田昌文
原題:A Scourge Returns: Black Lung in Appalachia
『環境健康展望』124巻1号A13、2016年1月
Environ Health Perspect, volume 124, issue 1, A13, January 2016

(著者について:バージニア州に住んでいるフリーランスのサイエンスライターで、著作はScientific American, Discover, New Scientist, Smithsonian、他多くに掲載されている)

pdfファイル→csijnesletter_035_201605_goto_01.pdf


ニューリバー・ヘルスクリニックに月に1回,Tシャツ,ジーンズ,野球帽の男たちの集団が長いテーブルを囲む。小さな平屋の黄色の羽目板の建物がスカ―バラ(Scarbro)という小さな町中にあるウェストバージニア南部のれき青質の丘にたたずんでいる。これがこのクリニックである。フェイエット(Fayette)郡黒色肺協会のメンバーたちはにがい黒いコーヒーを小さなスタイロフォーム(発砲スチロール)製カップに注ぎながら,互いに名前で呼び合いながら挨拶を交わす。

おしゃべりとコーヒーの間は咳,咳。男たちの幾人かは騒々しくからせきをするが,大方の男たちは静かである。彼らすべてに地方の炭鉱で働いていた時に患った黒色肺が進行している。一般的に全米の大人の18%がたばこを喫煙し(文献2)、炭鉱労働者もそのおおよそ22%がたばこを喫煙するという(文献1)。しかし(ここに集まる)彼らの誰ひとりとして煙草を吸わない。彼らは支援グループとして集まってきたわけではない。むしろ政府委託の黒色肺に対する給付の申請に必要な山積した事務処理を仕上げるために互いに助け合い,煩雑な上訴を進めようとしている。

メガネをかけた70代のグループリーダーであるJoe Massieは別にして多くのメンバーは50代から60代初頭である。黒色肺が進行している幾人かには比較的若いものもいる。そしてその他の労働者はすでに初期の病を患っている。そのように早く病にかかってしまった炭坑夫たちはアパラチアの至る所で荒れ狂う新しい黒色肺の患者の波の最前線にいる。

アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH1)) によって実施された国家的調査により重篤な黒色肺が急激に進行している地域的な集積を,特にアパラチアで確認した(文献3)。科学者たちは2005年に初めてこの厄介な傾向に注目したのであった。これらの懸念は炭鉱地域のアウトリーチ2)を行いながら,移動式医療機器を用いる自動車にとりつけた追跡調査で確認された(文献4,5)。後に続く研究でウェストバージニアが特に打撃が大きかったことが発表された(文献6)。2000年から2012年にかけて最も重症の黒色肺の流行は現在の粉塵法が立法化された(文献8)1970年以来見られなかったレベルにまで高まっていた(文献7)。

さらに恐ろしいことには,黒色肺の新しい世代は多くの場合,以前の世代より急速に進行することである。今日,進行した黒色肺は仕事を始めて7.5年から10年も経たないうちに発症してしまうと,ウェストバージニア大学の呼吸器専門家のEdward Petsonkは語る。しかしすべてのケースがそれほど速く進行するわけではない。それ故に労働衛生の研究者たちは自分たちが氷山の一角を見ているにすぎないのではと恐れている。

【続きは上記PDFファイルにてお読みください】

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