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ナノシルバー抗菌剤の健康リスク

2011年12月05日
csij 【102. ナノテクと社会】

「ナノシルバー」とは何かを知る人は少ないのではないか。それはナノマテリアルの中でも、我々の身近な日用品において、「ソックスからパソコンのキーボード、さらに、エスカレーターの手すり」に至るまで、最も多用されている強力な抗菌剤である。

しかし、その表示義務がないため、一般消費者は知る由もなく、メーカーはその安全性の検討は二の次で、専ら用途拡大に躍起(ミシガン大学Maynard教授)といわれている。

この問題については、本年1月、「ナノシルバー抗菌剤の安全性評価」として特集報告書(別添)をまとめた。今回、従来から、明確な科学的知見に準拠して活発な政策提言を行っているオーストラリアの環境保護団体Friends of the Earth (地球の友)は、その後の研究の進展をふまえ、ナノシルバーの過剰使用による「抗生物質耐性菌」と「免疫システムの不全によるアレルギー疾患」の多発に関する重要データをまとめた。

さらに、ノーベル賞受賞者(メルボルン大学Doherty教授)を含む免疫学・微生物・細菌学の専門家の意見を聴取して、ナノシルバーの無差別使用反対の同意を取り付け、オーストラリア政府に対してその使用制限の実施を要請している。ちなみに、Doherty教授は、「免疫システム健全化のため、子供には泥んこ遊びをさせるべき」と語っている。

当初は、便利と思われていたものが、適正なリスクアセスメントなしに見切り発車して、後に有害性が明らかになり、消費者の健康被害の回復に多大のコストを強いられた悲劇の事例は、アスベストをはじめとして、枚挙にいとまがない。

ナノシルバーのヘルスリスク研究が一層重要視される現在、「予防原則」に配慮し、信頼し得るRegulatory scienceに立脚した、産官学による透明性の高い論議が望まれる。

【訳と解説:小林剛(元東京理科大学客員教授、元カリフォルニア大学客員教授、医学博士)】

以下の3つの文書をPDFファイルで掲げる。

●【上記解説】 ナノシルバー抗菌剤のヘルスリスク~耐性菌とアレルギー性疾患多発との関連
csijnewsletter_010_kobayashi_01.pdf
  
●【解説】 ナノシルバー抗菌剤の安全性評価
csijnewsletter_010_kobayashi_02.pdf
 
●【『地球の友』報告書の翻訳】 ナノシルバー:政策の失敗は公衆の健康をリスクに曝す
csijnewsletter_010_kobayashi_03.pdf
 

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