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欧州食品安全行政庁のナノ食品へのリスクアセスメント指針

2011年09月23日
csij 【102. ナノテクと社会】

本文の翻訳を以下に掲げますが、それに先立って訳者(小林剛)の翻訳と解説による参考文書を4件掲げました。そちらを先にご参照いただければ、理解に資すると思います。

・資料1→csijnewsletter_09_kobayashi_suppl01.pdf

・資料2→csijnewsletter_009_kobayashi_suppl02.pdf

・資料3→csijnewsletter_009_kobayashi_suppl03.pdf

・資料4→csijnewsletter_009_kobayashi_suppl04.pdf

食物および飼料連鎖におけるナノサイエンスおよびナノテクノロジー適用のリスクアセスメント指針

欧州食品安全行政庁(EFSA)科学委員会、イタリー・パルマ

訳注:東京理科大学 小林 剛


原文は
Guidance on the risk assessment of the application of nanoscience and nanotechnologies in the food and feed chain
EFSA Journal 2011;9(5):2140 [36 pp.]
報告書全文PDFファイルがダウンロードできるサイトはこちら

全文の日本語訳のPDFファイルはこちら→csijnewsletter009_kobayashi.pdf


●要約

欧州食品安全行政庁(EFSA:European Food Safety Authority)は、食品および飼料連鎖におけるナノサイエンスや ナノテクノロジーの適用に由来するリスクの可能性の評価について、実用的なアプローチを開発した。本ガイダンスは、(1)食品添加物類・酵素類・香料類・食品接触材料類・新規食品類・飼料添加物類・農薬類に用いる加工ナノマテリアルの物理化学的特性の要件 (2)一般的には、in vitro遺伝毒性・吸収・分布・代謝・排泄・げっ歯類の反復投与90日間経口毒性研究における情報を含み、ナノ特性に由来するハザードの確認と特性解明についてのテストアプローチを示している。このガイダンスでは、食品接触材料類から加工ナノマテリアルの移動がないことを示すデータにより、それによる暴露がないことが立証されている場合や、加工ナノマテリアルそのものの吸収が無く、完全に分解/溶解が実証されている場合についての情報は少ないことを認めている。本ガイダンスは、リスクアセスメントを実施するには不確実性を含むことを示している。この領域は急速に発展しているため、このガイダンス文書は、適切な場合には改訂されるであろう。©欧州食品安全行政庁2011


●KEY WORDS

加工ナノマテリアル・食品・飼料・ナノサイエンス・ ナノテクノロジー・リスクアセスメント


●サマリー

欧州委員会の要請により、科学委員会は食品および飼料へのナノサイエンスおよび ナノテクノロジーの適用を含む安全アセスメントのガイダンス文書の作成を求められた。この科学意見は、食物および飼料連鎖(食品添加物類・酵素類・香料類・食品接触材料類・新規食品類・飼料添加物類・農薬類を含む)における加工ナノマテリアル(ENM)の利用を含む適用のリスクアセスメントの実用的なガイダンス(ENMガイダンスと称する)を示している。

リスクアセスメント・パラダイム(ハザード確認・暴露アセスメントによるハザードの特性解明・リスクの特性解明)は、これらの適用に適切である。従って、リスクアセスメントを実施するために、リスクアセッサーに対して、種々の段階について適切なデータや情報を利用し得るようにすべきである。

ENMの適切な特性解明は、 食品/飼料製品およびテスト条件下における特性と物理化学的様態の実証に不可欠である。物理化学パラメーターは、種々の環境内で変化するため、ENMの特性解明は、理想的には、次の五つの段階、すなわち、製造(初期の新鮮な状態)段階、食品/飼料製品で使用する段階、食品/飼料マトリックス中での存在段階、毒性テスト段階、生物学的液体・組織中での存在段階における実施が望ましい。

ENMのリスクは、その化学成分・物理-化学特性・組織との相互作用・暴露レベルにより決定される。その物理-化学特性の解明はENMの同定と、ENMガイダンスが適切であるか否かの決定に必要である。 ENMガイダンスが適用可能であれば、テストからの結果は、暴露アセスメントと組み合わせて、ハザード評価の情報をもたらし、リスクの特性解明の基礎を形成するであろう。吸収(Adsorption)・分布(Distribution) ・代謝(Metabobolism)・排泄(Excretion)の(ADME)パラメーターは、ENMの化学的組成のほか物理-化学的特性(例えば、サイズ・形状・溶解性・表面電荷・表面活性など)の双方により影響を受けるように見える。

ナノマテリアルの詳細なリスクアセスメントを開始する前に、使用計画からの暴露シナリオの概要を予測すべきである。これらの暴露シナリオは、ハザードの特性解明の範囲の決定に寄与し、リスクアセスメントに必要な暴露アセスメントのパラメーターを示すであろう。

毒性テストアプローチには、6種類のケースの概要が示される。ENMの使用が、ENMの存在を生じさせない、あるいは、食品/飼料における分解/溶解産物を示す証拠が確認された場合には、追加的なテストは全く不要である。食品/飼料において、ENMが摂取以前に非ナノ形状への変質を完了していると判断された場合には、特異的に意図された使用についての非ナノ形状についてのEFSAのガイダンスを適用すべきである。ENMが胃腸管内において、吸収されずに完全な溶解/分解が実証された場合には、ハザードの確認および特性解明は、非ナノ形状物質のデータ(入手できる場合は)に依存可能である。同一物質の非ナノ形状について、食品/飼料マトリックスおよび胃腸液中に存続するENMの一部あるいはすべての情報が入手できる場合には、ADMEの情報の比較、非ナノ形状のADMEの毒性および遺伝毒性、ENMの反復投与90日経口毒性研究および遺伝毒性情報に基くテストアプローチが推奨される。非ナノ形状について、食品/飼料マトリックスおよび胃腸液中に存続するENMの一部あるいはすべての情報が入手できない場合には、ENMの毒性テストへのアプローチは、ナノ特性を考慮した現行のENMガイダンスの修正による使用を意図した関連のEFSAガイダンスに準拠すべきである。

ENMについての適切なin vitroおよびin vitro研究は、ハザードの確認と用量―反応関係データの取得のために実施すべきである。ナノ形状物質について用いられている一部のテストモデルおよび標準テストプロトコールは、ENMのテストとして必ずしも適切あるいは最適ではないであろう。これらの問題に対応するため、現在、科学界の努力が進行中である。

暴露アセスメントにおけるENMの定量の出発点では、現在、食品/飼料への添加物質量あるいは接触量に依存しなければならない。添加ENMの当初の特性解明には、暴露アセスメントにおける推測の利用が可能であるが、食品/飼料マトリックス中に存在するENM の量の測定が望ましい。現在は、ENMをその場でルーチンに測定できず、暴露アセスメントとしては不正確である。暴露データを欠き、食品/飼料マトリックス中のナノ形状物質の測定が不可能であるため、添加されたすべてのENMは、ENM の構造/特性は未決定のままで、毒性研究において用いられる構造/特性との関連付けは困難であるが、現在は、ナノ形状として摂取され吸収されると推定すべきである。

ENMの同定・特性解明・検出に関する不確実性は、ENMのすべての適用・側面・特性に対応する適切で信頼性の高いテスト方法の欠落に関連している。同様に、現在の標準的な生物学的および毒性学的テスト方法の適用性については、多くの不確実性が存在している。これらの理由から、このENMガイダンスは、経験と取得した知識により更新が必要であろう。本領域は急速に発展しているため、このガイダンス文書は、適切な場合には改訂されるであろう。

(以下、上記の日本語訳ファイルに続く)

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