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ノート型PCの電磁波計測 報告(その1)

2010年12月06日
csij 【101. 環境電磁界】

市民研・環境電磁界研究会
計測実施:2010年10月~11月

pdfはcsijnewsletter_005_pcdata.pdf


●背景
パソコンの利用が全社会に広がった今、そこから発せられる電磁界は我々共通の関心である。一般の会社員においては、ほぼ全勤務時間中パソコンを利用しているというケースも珍しくない。さらに、ノートパソコンが高い普及率を占めるようになってきたため、もし本体から発せられる電磁波がたとえば数ミリガウス程度の強さを示すとするなら、電磁界をより近距離から受けることによりトータルの暴露量はかなり大きくなるものと想定できる。パソコンは現代社会において最大の電磁界暴露源の一つであることは間違いないと思われる。

しかし、これまでパソコンが検証対象としてあまり取り上げられてこなかったのは、
1.液晶画面への切り替えが進み、CRTモニターと比べて、画面から発せられる電磁波は格段に低減したことで、パソコン電磁波自体への懸念が弱まったこと
2.測定箇所、使用率、性能向上等が十分に考慮されなかったことによる過小評価
などが原因であると思われる。しかし、CPUのスピードだけでも数年前に比べても格段に上がっており、数年前までになされてきた実測データは、実情とあわない可能性が高い。

実際は、CPU、GPU、電源、モニター、無線LAN等の異なる発生源に加え、さらにそれらの使用率により強度が変動する、極めて複雑な複合暴露が長期間に渡って起こっている。その影響は未だほとんど研究されていない。本研究によって、わずかながらでも関心を高め、また解明に貢献できればと考えた次第である。

●手順
製造年代や性能が多岐にわたるように、ノートパソコンを収集し、それらを入力操作で触れる面(両手を載せるキーボードやタッチパッドなどが配列する平面部分)において、予め定めた位置を含む数カ所で、電磁波(低周波電場ならび磁場、及び高周波)を測定する。起動時および稼働時の両者において平均値と最大値を読み取る。

●測定に先立って予備的に検討したこと
パソコンを分解すると、内部は【図1】に示した部品の組み合わせでできていることがわかる。その配置や仕様は個々のパソコンの機種ごとに異なるが、【図2】に示したような定点的な測定を行うと、いかなる部品がどれだけ稼働しているか/していないかで、その定点部分での電磁波の強さが変動することが観測できる。何が電磁波の強度を決める支配的な要素かを正確に決めるのは、慎重な検討を要するが、CPU、HDD(ハードディスクドライブ)、ファンの3者の稼働具合が大きく関係しているらしいことは推測できたので、実際の測定では、【図3】のように測定ポイントとして5地点を定めるとともに、計測器の位置を少しずつずらしながら、最大の電磁波強度を得られた地点(F地点と記述)も決めることとした。

【図1】 パソコンの内部

【図2】 内部を20箇所で計測した値(単位はmG)

【図3】 5つの測定ポイント

●計測器機
・超低周波磁界
米国SYPRIS製の超低周波4080型3軸式低周波ガウスメーター
確度(50~60Hz) ±(2%+1digit)
測定レンジ(範囲) 0.1~511mG
周波数特性(±5%) 45~550Hz

・超低周波電界
ドイツFauser Elektrotechnik 製のDigital-Feldmeter FM6
仕様については http://www.fauser-etech.com/src/fm6.htm


●結果のまとめ [測定結果は6ページ以降に掲載]

1)低周波磁界について

・新旧問わずノートパソコンから発生している低周波磁界は、最大発生地点における強度では、いずれもかなり高いことが判明したい。一番小さいものでも10mG以上、100mGを超えるものも10台中で4台あった。

・あるパソコンでは最大値地点がファン上部でその稼働状態で大きく値が変わった。使用時の曝露を考えると、常に最大値を曝露しているとは言えないが、使用時にファンが稼働状態となっている時間は長いので、やはりかなりの大きさの曝露を受けていると考えられる。

・発生強度が最大地点周辺のみ高いもの(他の部分は1mG以下)とその他の場所もやや高い値(数mG程度)が測定されるものがあった。

・F地点(最大値観測地点)において、ソフト(internet explorer)を立ち上げた際に、アイドリング時に比べ値が強くなるものが多かった(未測定ものや一部変化のなかったものもある)。

2)低周波電界について

・低周波電界については非常に強い値が測定された。強度についての指針となる値は、スウェーデンのMPR-Ⅱ(25V/m)やTCO(10V/m)があげられるが、それらと比較すると数十倍の値となっている。アース付きのデスクトップパソコンを除き、パソコン全般にどれも高い値を示しているだろうと推察できる。

●今回の測定から推察できることならびに今後の測定に向けての課題

1)低周波磁界について

・強い電磁波の発生の原因としてファン、CPU、HDDが要素としてあげられる。それらの位置を分解図より特定し、その稼働具合と電磁波強度の関係性を明らかにする必要がある。

・旧式のものについてはCPUよりもファンによる発生強度が支配的であると予想される。

・新式のものについては、旧式と比べた場合に、CPUより発生すると思われる電磁波が概して強くなっている。またソフト稼働時やCPU稼働率上昇時(explorerウインドウを動かすといった簡単な動作でも)に発生する強度の上下幅が大きくなっていると推測される。

・今回の測定からではないが、電気店に足を運んで多くの最新機種のパソコンをひとわたり測定したところ、CPU等がある地点以外の部分でも高い値が測定されるものが数多く見受けられた(かなりの測定地点で10mGを超えた)ので、おおむね新しいパソコンほど、発生する電磁波の平均的な強度は高くなっているように思われる。

・次回の測定に向けて予備的に行ったことだが、最新型のMacノートはウィンドウの最大最小化、画面のスクロールなどでも低周波磁場の大きな変動がみられた。またアイドリング時においても高い傾向がある。

2)1kHz~75kHz帯低周波磁界および高周波について

・別の計測器による測定により、1kHz~75kHz帯での低周波磁界がCPUらしき部分より発生していることがいくつかの機種について確認された。これらの強度と発生箇所を正確に特定する必要がある。

・いくつかの機種について、高周波についてもディスクドライブ稼働時などにかなり大きな値が測定されたので、他の機種を含めた多くの機種で、発生傾向や強度を調べる必要がある。

・無線LAN使用時の発生強度を調べ曝露状況を推測する必要がある。■

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